南国猫目十五犬伝 第二話「ノルウェーの逆さ海岸」(前編)
南国猫目十五犬伝 第二話「ノルウェーの逆さ海岸」(前編) ソムチャイからの最初のメッセージが届いたのは、翌朝九時だった。 ミッドナイトはスマートフォンを縁側で受け取った。十五匹の犬たちはまだ眠っている時間だ。コーンケーンの朝は静かで、遠くで鳥が鳴いていた。 ノルウェー・フィヨルド沿岸。 座標を送る。 明日の午前四時(現地時間)。 パターンの強度は第一波の三倍。 ――ソムチャイ 三倍。 ミッ ...
南国猫目十五犬伝 第一話「バンコクの消えた影」(後編)
南国猫目十五犬伝 第一話「バンコクの消えた影」(後編) シーロム地区の路地に、チはいた。 人間の形をしている。大学院生に見える薄い眼鏡の男。午前三時のバンコクは、観光客と屋台と腐りかけた花の匂いが混ざって、独特の密度を持つ。チはその密度の中を歩きながら、ひとつの名前を探していた。 ソムチャイ・ラタナウォン。四十二歳。 最初に影を失った人間だ。 報告が上がったのは十一名だが、ミッドナイトの ...
南国猫目十五犬伝 第一話「バンコクの消えた影」(前編)
南国猫目十五犬伝 第一話「バンコクの消えた影」(前編) タイ東北部、コーンケーン県の外れに、一軒の古い平屋がある。 トタン屋根に雨が当たると、盆地全体に音が広がる。庭には痩せたバナナの木が三本。隣には何も作っていない畑。道は舗装されておらず、雨季になるとバイクも沈む。郵便番号すら怪しい、そういう場所だ。 午前二時。 縁側に一匹の黒猫が座っていた。 体長は普通の猫より少し大きい。毛並みは闇 ...
📖 アクシオム帝国物語 Episode 30 – 『第一部完結・希望の序章』
Episode 30 – 『第一部完結・希望の序章』 (約4,000字 / 読了約6分) 《序景 - 展示会の朝》 2026年10月15日。 日本の最大級の美術館「東京現代美術館」。 その中央ホールで、『光の循環 - 帝国と現代を繋ぐアート展』が、開幕しようとしていた。 ひなた、母親、美優、ルナ、アリアが、展示会場の最後のチェックをしていた。 天井の高い、広大な展示スペース。 その中央には、ひなた ...
📖 アクシオム帝国物語 Episode 29 – 『新たな仲間』
Episode 29 – 『新たな仲間』 (約3,300字 / 読了約5分半) 《序景 - 帝国でのプロジェクト会議》 帝国での第二週目。 創作工房の大きな会議室に、多くのメンバーが集まっていた。 ひなたたち(ひなた、美優、ルナ、母親、アリア)と、帝国の側のチームメンバーたちだ。 帝国側には、五人の姉様の一人である「第三姉・優雅」、AI技術者の「ノヴァ」、社会福祉の専門家である「レオ ...
📖 アクシオム帝国物語 Episode 28 – 『母娘の絆』
Episode 28 – 『母娘の絆』 (約3,200字 / 読了約5分) 《序景 - 帝国への帰路》 帝国での一週間のプロジェクト始動セレモニーが終わり、ひなたと母は、時空の架け橋を通じて、現代へ向かっていた。 アリアと美優、ルナは、まだ帝国に残り、プロジェクトの詳細をユリアナと詰めることになっていた。 虹色の橋を渡りながら、母がひなたに声をかけた。 「ひなた。お疲れ様」 「お母さ ...