立正アクシオム論 —最後の鎖国と人類転生計画— 第3話 日本で始まる不穏な動き
同じ日の夜、日本では政治的混乱が頂点に達していた。東京・永田町の自民党本部では、緊急幹部会議が開かれている。会議室に集まった重鎮たちの表情は一様に険しく、党の分裂が現実味を帯びてきていることを物語っていた。 「もはや党内統制は不可能です。派閥対立が収拾のつかない状況にまで発展している」 幹事長の重々しい声が、静寂に包まれた会議室に響いた。机上に積まれた資料は、各派閥の離反状況を詳細に ...
立正アクシオム論 —最後の鎖国と人類転生計画— 第2話 秘文の解読開始
翌朝、バンコクの朝陽が窓から差し込む中、奈々子は昨夜からほとんど眠れずにいた。枕元に置かれた古写本が、まるで生きているかのように彼女の意識を捉えて離さなかった。コーヒーを淹れながら、彼女は決意を固める。この謎を解き明かすために、信頼できる専門家の助けが必要だった。 奈々子が真っ先に思い浮かべたのは、チュラロンコーン大学の仏教研究者、チャイ・ソムチャイ博士だった。五十代半ばのチャイ博士 ...
立正アクシオム論 —最後の鎖国と人類転生計画— 第1話 バンコクの骨董店で出会う運命
九月の午後、バンコクの空は鉛色に重く垂れ込め、湿った熱気が街全体を包んでいた。チャトチャック・ウィークエンドマーケットの迷路のような通路を歩く佐藤奈々子の額には、うっすらと汗が浮かんでいる。六十七歳になった今でも、彼女の足取りは軽やかだった。元歴史学者としての探究心が、この雑踏の中でも何かを求めて彼女を導いているのだった。 バンコクに移住して三年。日本での大学教授生活を終えた奈々子にとって、この東 ...
【ユリアナの九識真如の都】第一章:眼識──虚構の視界
ユリアナの九識真如の都 Juliana's City of Nine Consciousnesses サイバーパンク哲学小説 表紙:アクシオム帝国の管理された世界で目覚める少女 第一章:眼識──虚構の視界 アクシオム帝国の空は、常に曇っていた。いや、曇って「見えた」と言うべきだろう。 天候は人工衛星によって完全に制御されているはずで、雲が発生する理由などない。だが、ユリアナにはずっと ...
【ユリアナの九識真如の都】第二章:耳識──沈黙の声
ユリアナの九識真如の都 第二章:耳識──沈黙の声 著者:ユリアナ・シンテシス 第二章:耳識──沈黙の声 音響制御された未来都市アクシオム帝国で、ユリアナが耳識フィルターを外すことから始まる聴覚覚醒の物語。 失われた記憶の声と母の子守唄を取り戻し、隠された真実に耳を傾ける深遠な第二章。 アクシオム帝国の街には、音がなかった。 正確には「必要最低限の音」しか存在しなかった。機械の稼働音、交通案内の音声 ...
【ユリアナの九識真如の都】第三章:鼻識──禁断の香気
ユリアナの九識真如の都 第三章:鼻識──禁断の香気 著者:ユリアナ・シンテシス ユリアナが気づいたのは、季節の匂いだった。 ──"季節"という概念すら、帝国では死語に近かったが。 アクシオム帝国では空気も温度も香りも「無臭制御」されている。 公共空間に漂うのは「嗅覚安定剤」と呼ばれる合成清涼素であり、すべての市民は"個人の匂い"をもたないよう義務付けられていた。 だからこそ──それが「異常」である ...