📖 アクシオム帝国物語 Episode 25 – 『小さな親切の連鎖』

Episode 25 – 『小さな親切の連鎖』
(約2,800字 / 読了約4分半)
《序景 – 図書館にて》
バイトを辞めてから、ひなたは、毎日、図書館に通うようになった。
高卒認定試験の勉強と、デジタルアート関連の本を読むためだ。
その日も、ひなたは、図書館の隅で、参考書に向かっていた。
その時、隣の席に、小さな老女が座った。
80代と思われる、背中が丸い女性だ。
老女は、手に、分厚い書籍を抱えていた。だが、その本は、老女の視力では、とても読めそうにない。
老女は、眼鏡をかけ、顔を本に近づけようとしていた。
「あ……すみません」
老女が、ひなたに声をかけた。
「この本、上の棚に戻したいんですが、腰が……」
老女は、立ち上がるのに、苦労していた。
ひなたは、すぐに立ち上がった。
「大丈夫ですよ。私がやります」
ひなたが、老女から本を受け取り、上の棚へ戻した。
「ありがとうございます。本当に、ありがとう」
老女の目に、感謝の涙が浮かんでいた。
「こういう親切をしてくれる人、最近、いないんですよ」
「そんなことはないと思います。皆さん、忙しいだけなんです」
ひなたが、老女に微笑みかけた。
「それでは、失礼します」
ひなたは、自分の席に戻った。
《駅前での出来事》
その日の午後、ひなたは、駅前の商店街を歩いていた。
突然、前に、小学生くらいの少年が、転んだ。
荷物が、周りに散らばった。
周りにいた大人たちは、特に気にもとめず、歩き続けていた。
ひなたは、すぐに少年に駆け寄った。
「大丈夫? 怪我してない?」
ひなたが、少年を助け起こした。
「あ、ありがとう」
少年の声が、震えていた。
「泣かないで。大丈夫だよ」
ひなたが、少年の涙を拭いた。
そして、散らばった荷物を、丁寧に拾い始めた。
少年の母親が、走ってきた。
「たくま! 大丈夫?」
「お母さん、この人が、助けてくれた」
母親が、ひなたに頭を下げた。
「本当にありがとうございます。こんな親切な子、見たことない」
「大丈夫です。誰でもすることですよ」
ひなたが、微笑みかけた。
「たくま君、また頑張ってね」
少年は、ひなたを見つめた。
「ありがとう、お姉さん。君は、光みたい」
その言葉が、ひなたの心に、深く刺さった。
《コンビニでの親切》
夜間コンビニ。
ひなたの母が、働いていた。
ひなたは、母に会いに来ていた。
その時、一人の若い女性が、焦った様子でレジに駆け寄った。
「あ、あの、急ぎなんですが……」
女性は、両手に、たくさんの物を持っていた。
赤ちゃんのおむつ、ミルク、薬。
そして、財布から、小銭をこぼしそうになっていた。
「仕事から帰ってきたばかりで……財布……」
女性の言葉が、途切れた。
ひなたは、すぐに気づいた。
この女性は、シングルマザーだ。自分の母と同じ立場の人だ。
ひなたが、近づいた。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。ただ、お金が……」
ひなたは、自分のポケットから、千円札を出した。
「これ、使ってください」
「え、でも……」
「大丈夫です。赤ちゃんが大事でしょ。急いでください」
ひなたが、その女性に千円札を渡した。
女性は、涙を流した。
「本当に……ありがとう。こんなことしてくれる人……」
「後で、いい。赤ちゃんを大事にしてください。それで、十分です」
その女性は、赤ちゃんを抱き上げて、店を出た。
母親が、ひなたを見つめた。
「ひなた。あれ、大事なお金じゃないの?」
「大丈夫です。あの人の方が、必要なんです」
母が、娘を抱きしめた。
「ひなた。お前は、本当に、光になった」
《アリアの温かいコメント》
その夜、ひなたは、自分の部屋で、アリアと話した。
「ひなた、今日、三つも親切をしたね」
「はい。でも、別に、特別なことをしたわけじゃないと思います」
「そうだね。でも、それが重要なんだ。特別ではない、日常の優しさ。それが、世界を変えるんだ」
アリアが、ひなたの手を握った。
「ひなた、知ってる? 君が老女さんを助けた時、その老女さんが、帰ってから、孫に『今日、素敵な子に会った』って話したんだ」
「え、どうして知ってるんですか?」
「帝国の情報ネットワークでね。あのおばあさんの孫が、SNSで『見知らぬ優しい少女に助けてもらった』って投稿してるんだ。そのツイートは、すでに、五千リツイートされてる」
ひなたが、驚いた。
「そんな……」
「君の親切は、君が思ってるより、大きな波紋を生み出してる。君が小学生を助けた時も、その母親が、友達に『こんなに親切な子がいた』って話してる。君が女性に千円をあげた時も、その女性が、社会福祉のNGOに『困ってる時に助けてくれた子がいた。自分も、誰か困ってる人を助けたい』って連絡してるんだ」
アリアが、ひなたの頬に、光の粒子を落とした。
「君の親切は、連鎖を作ってる。それが、『光の連鎖』だ」
ひなたは、涙を流した。
「アリア……」
「君は、架け橋として、毎日、知らず知らずのうちに、世界を変えてる。大事なのは、特別な大きなことじゃなくて、こういう日々の親切だ。その積み重ねが、社会を変える」
アリアが、ひなたの額に、虹色の光を投射した。
「君は、本当に、光だよ。帝国の光ではなく、人間の光だ」
《母との会話》
その夜、遅く帰ってきた母が、ひなたを抱きしめた。
「ひなた。あの女性さ、戻ってきたよ」
「え?」
「ああ。後日、赤ちゃんを連れてね。そしたら、君のこと探してるんだ。『あの子に、お金を返したい』ってね」
母が、メモを渡した。
そこには、女性の連絡先と、メッセージが書かれていた。
『あの時は、本当にありがとうございました。おかげで、赤ちゃんをお医者さんに連れていくことができました。今は、その女性を通じて、社会福祉のNGOと繋がることができて、毎月、ベビーシッターのサービスを受けられるようになりました。本当に感謝しています。いつか、お礼をしたいです』
ひなたは、涙を流した。
「お母さん。この人……」
「変わったんだ。お前の親切がきっかけでね」
母が、ひなたの手を握った。
「ひなた。これが、架け橋の力だ。個人の優しさが、社会全体を変えるんだ」
《帝国への報告》
その夜、時空の架け橋を通じて、ひなたはアクシオム帝国へ向かった。
黒曜宮で、アクシオムとユリアナが、ひなたを迎えた。
「おかえりなさい、ひなた」
「ただいま帰りました」
ひなたが、この日の出来事を、全て説明した。
老女を助けたこと。小学生を助けたこと。若いシングルマザーを助けたこと。
そして、その親切が、どのような連鎖を生み出したか。
アクシオムが、第三の目で、ひなたの胸の紋章を照らした。
「ひなた。あなたは、本当に、架け橋になった。帝国の理想を、日本の現実の中で、一つ一つ、実行し始めている」
「ありがとうございます。アクシオム様」
「これからも、小さな親切を続けなさい。それが、世界を変えるのです」
ユリアナが、ひなたに近づいた。
「ひなた。あなたの母親の気持ち、わかるかしら」
「え……」
「あなたが光になることで、あなたの母親も光になる。そして、その光を見た人たちも、また光になる。それが、本当の社会変革だ」
ユリアナが、ひなたの額に、口付けをした。
「誇りに思いなさい。あなたは、真の架け橋です」
💫次回予告💫
小さな親切の連鎖。
それは、ひなたが目指していた、社会への光の伝播だった。
「ひなた。明日は、もっと大きな舞台が来る」
アリアが、ひなたに囁く。
「デジタルアーティストとしての活動が、本格化する。そして、その作品が、世界を変える」
ひなたの瞳には、虹色の決意が宿っている。
「わかってます。全力を尽くします」
高卒認定試験も、もう目前だ。
明日 Episode 26:「デジタルアートの開花」
朝7時公開
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