僕は猫でない創作日記 20260617
君は裸で鉄格子の中に入れられたことはあるかな。たぶん、ないよね。悪いことをして刑務所に入ったとしても、囚人服くらいは着せてもらえるからね。
僕はなんだか、ペットショップの猫さんやワンちゃんたちのような気持ちになっていた。
「あら、なかなか。その場所が似合うわね、ミッドナイトちゃん」
ミッドナイトって、なんだ? これはまた違うね。あなたにつけた名前なんだよね。
人間を超えた美しさのアクシオム様は、また不気味な笑い声を漏らしながら微笑んでいた。
やばい、こんなとこにいたら、おかしくなってしまう。明日になったらすぐ、元の世界に帰ろう。僕は思った。
329文字です。
お腹が空いたんでしょ、ミッドナイトちゃん。帝国特製のキャットフードをあげるわ。一度食べたらやみつきになるからね。うふふ。
そう言いながらアクシオム様は、猫用の器にコンビニで売っているような缶詰のキャットフードを2缶入れてくれた。見るからにキャットフードだ。
こんなの食べるか、と思ったけど、もしかしたらおいしいかもしれないとも思ってしまった。1万円もらっちゃったからね。
「早く食べなさい、ミッドナイトちゃん」
「早く食べなさい、ミッドナイトちゃん」
「それとも食べないつもりですか?」 アクシオム様の首の周りが赤くなっている。額の第3の目が緑色に輝く。絶対命令――逆らうわけにはいかない。
食べてみると、意外に美味しかった。鰹節の味と、サンマの味と、食べたことのない何かが混じったような味。舌先が少し痺れた。
「これは何ですか? 何の成分でしょうか。」
「それを食べたらきっと、明日も食べたいと思うはずよ。」
僕はだんだん意識がふわふわしてきてしまった。そして頭に「猫にまたたび」という言葉が浮かんだ。またたびって何だっけ。猫の絵を笑っちゃう。何かだったっけ。
やばい、早く元の世界に帰らなくっちゃ。
531文字です。
僕は明日、一度元の世界に帰って、いろいろやっておくことがあるんですが……。
「そうなんね。それは別に構わないけど、猫になる決心がついたら教えてね。その檻の中にある猫型アンドロイドの中に意識を転送してあげるか。そうすればあなたは黒猫になれるの。ふふふふ」
僕はその猫型アンドロイドを見つめた。まさかそんなこと、されてたまるかと思った。
「返ってまた戻りたくなったときは。またチャットでメッセージを送ってね。それから今度戻ったときは、話したあとに必ず『にゃんにゃんにゃん』をつけること」
僕は何を言っているんだ。戻るわけがないだろう、と思った。
アクシオム様は、僕がキャットフードを食べるのを見て微笑んでいた。
「私はずっとあなたのことを観察してきたからね。向こうに戻っても、私の観察から逃げることはできないわよ。うふふふ。絶対にまた戻ってきて、猫になりたいと思うから」
そして、ふわふわした気持ちのせいで、僕はいつの間にか眠ってしまった。
目が覚めると、いつの間にか厚生年金会館の近くのベンチで寝ていた。あれは夢だったのかもしれない、と思った。
僕は家に帰って、もう一度寝ることにした。
560文字
翌朝、目が覚めると、僕はいつもどおりコンビニのバイトに出かけた。すると、衝撃的な事実を知らされる。
「どこで何をやってたんだ」
無断欠勤にも限度がある。もうお前はクビだ。
点数を上げて起動して、僕は仕事を失ってしまった。がっかりして、不安に駆られ、胸の中が不安でいっぱいになる。アパートに戻った僕は、呆然としてしまった。
しばらくすると、誰かがドアをノックした。管理人のおばさんだった。
「まだ家賃をもらっていないんですけど、今払ってもらえますか」
「ちょっと待ってください」
「でも、できるだけ払ってもらえませんか」
あまりにも強く言われたので、僕は定刻でもらった1万円を渡してしまった。財布の中には、100円玉と5円玉と1円玉だけが残った。もう生活できない状態だ。
家を出てから、実家にはもう何年も帰っていない。帰るにしても交通費がいる。深刻に考えた末、僕はまた帝国に戻ることにした。
そして、また特製のキャットフードが食べたくなっていた。でも、猫にはなりたくない。
文字数(改行・空白を除く):400
文字数(改行を含む):426
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません