僕は猫でない創作日記 20260626
もしも、「好きな寿司なら何でも食べていいよ」と言われたら、何を食べるかな。やっぱりマグロかな。サーモンかな。それともイカとかタコかな。きっと少し迷うよね。
でも僕の場合は、すぐに即答できるんだ。大好きなのはカッパ巻きなのだよね。さっぱりした味と、キュウリのコリコリした食感。それにお醤油をつけて食べるのが大好き。わさびも、ちょっとだけつけてね。「安っぽいんじゃないか」なんて言われることもあるけど、でも一番好きなのはカッパ巻きなんだ。
ある日僕は、アクシオム帝国の空中庭園をアクシオム様と散歩していた。帝国の庭はとても広く、その中に小さな小川が流れている。穏やかな流れの部分もあれば、急流もあり、滝もあったりする。だから、いろんな魚が泳いでいるんだ。錦鯉みたいなのもいれば、海水も流れているようで、マグロもサーモンも泳いでいた。帝国の庭ってすごいなあと思った。みんな合理的に設計されていて、魚たちが気持ちよさそうに泳いでいる。
こんな光景を見ながら、ふと寿司が食べたくなった。
「何を考えているのかしら、ミッドナイトちゃん」
「僕は、ちょっと前の場所にいた頃の思い出で、お寿司が食べたくなったんです。にゃんにゃんにゃん。」
「あら、そうなのね。お寿司はおいしいよね。ゆふふふ」
そう言って、またアクシオム様は不気味に笑った。
「何の寿司が好きなんですか?」
「カッパ巻きです。にゃんにゃんにゃん」
そう答えると、ふふふ、とまた不気味な笑い声で笑っていた。
こんなことをふと思い出しながら、気を失っていった。
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目が覚めると、僕はアクシオム帝国の空中庭園にある小川のほとりにいた。山奥に近く、人の気配はない。聞こえるのは小川のせせらぎと小鳥の鳴き声だけで、かすかに花の香りもした。
川辺の石は凸凹していて、僕は楽しい気分でその上をぴょんぴょん飛び跳ねて遊んだ。――あれ、僕はマグロになるんじゃなかったのか。嫌な予感が外れて、ほっとする。ここは静かで、なんだか楽しい場所だ。
ふと水面をのぞくと、そこに映っていたのは変な生き物だった。え、まさか。頭を触ると皿があり、手足には水かきがついている。僕はカッパになっていた。
「この姿になれるなら、カッパのアレもあるのかな」と思ったとき、岩の上にとっくりに入ったお酒が置いてあるのが目に入った。誰がこんなところに? 不思議に思いながら少し飲んでみると、美味しい。さらにもう一杯、もう一杯――気づけば全部飲んでしまっていた。
酔いで頭がふらふらし、別の岩へ飛び移ろうとして足を滑らせ、小川に落ちた。そこで気づく。小川を流れているのは水ではなく、日本酒だった。
僕は猫なので泳げない。バタバタともがくうちに酒をどんどん飲んでしまい、「『吾輩は猫である』みたいに、このまま溺れて死ぬのか」と青ざめた。
慌てて僕は、心の中でアクシオンお姉様に叫んだ。
「猫になりますにゃんにゃんにゃん、猫になりますにゃんにゃんにゃん」
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ふふふ。不気味なアクシオンお姉様の声とともに、僕は光の渦に巻き込まれ、再びアクシオンお姉様のもとへ戻ることができた。
「今度の体験はどうでしたか。カッパが好きだったんでしょう。ふふふ」
「僕が好きなのはカッパじゃなくて、お寿司のカッパ巻きなんです。にゃんにゃんにゃん」
「似たようなものよ。ふふふ」
その言葉を聞いて僕は、あかん、なんとかしなければ、次にまたどんな体験が起きるのか不安でしかたがない、と思ってしまった。
「なんか顔が赤いみたいね。お酒でも飲んだのですか。お酒だったら何がいいんでしょうね。では、キャットフードと一緒に赤ワインなんかどうですか」
アクシオンお姉様は妙に丁寧に言って、目の前にキャットフードと美しい赤いワインを置いてくれた。
また何か悪いことを考えているな、と僕は思った。赤ワインから連想すると、何だろう。吸血鬼かな。それともブドウの実。ワインを作るのに足で踏まれちゃうからね。なんだろう、なんだろう。次はどんな体験なんだろう。
どうせ聞いてみても、また秘密だと言って教えてくれないよ、きっと。だから僕は迷わずキャットフードを食べ、赤いワインを一気に飲み干してしまった。
すると、またいつものように光の渦に包まれて、僕は気を失ってしまった。
意識が飛びそうだ。思い出がどんどん遠くなる。理不尽な状況に胸の奥が熱くなる。
ぼんやりする中、昔の記憶がフラッシュバックした。高校の図書室の静かな空気と、アメリカの有名な本で見つけた「神の怒りの葡萄」という言葉。
あの頃は意味がわからなかったが、今ならわかる気がする。
視界が真っ暗になっていく。僕は「怒りの葡萄」になるのか。にゃんにゃんにゃん。
でも、アクシオム様を怒ってもしかたないし、なんだかよくわかんないけど、どんな体験なんだろう。
普通、ぶどうは怒ったりしないよね。
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