戦場の黒猫ミッドナイト 新たなる仲間

三匹と二人の魂は、線路に沿って歩き続け、やがて途中で崩れ落ちた鉄橋へたどり着いた。

向こう岸まではおよそ百メートル。橋は完全に途切れており、渡る方法は見当たらない。僕たちはしばらく立ち止まり、相談した末に泳いで渡ることにした。

 

けれど、僕は猫だ。泳ぎは得意ではない。

「僕の背中に乗ればいいよ」

ジェットが胸を張って言った。

僕はロバのセルバンテスを見つめた。

「でも、セルバンテスは泳げるの?」

するとジョバンニおじいさんが笑った。

「ロバは泳げるぞ。生まれつき体が浮きやすいからな」

セルバンテスも得意そうに耳を動かした。

「そうなんだよ。僕たちは意外と泳ぎが上手なんだ」

ジョンおじいさんとジョバンニおじいさんは顔を見合わせた。

「ワシらは魂だから問題ないのう」

こうして作戦は決まった。セルバンテスの背中にジェットが乗り、その背中に僕がしがみつく。二人の魂はふわりと宙に浮きながら川を渡ることになった。

川の水は驚くほど冷たかった。

僕の目には、その水が腐ったトマトジュースのような赤色に見えていた。

みんなには見えない。しかし僕には見えた。

流れの中には、人や動物の亡骸、壊れた家々の残骸が無数に漂っている。まるで川そのものが、この世界の悲しみを運んでいるようだった。

しかも匂いがひどい。

腐ったゴミ箱の中に顔を突っ込んだような悪臭が漂っている。

「その匂いなら、ずっと前からしていたよ」

ジェットが言った。

セルバンテスはゆっくりと、しかし確実に川を進んだ。百メートルの距離は思った以上に長く感じられた。

ようやく岸へたどり着いたときだった。

僕は不思議なものを見つけた。

「ねえ、あそこ。何かが動いているよ」

近づいてみると、それは大きな亀だった。

仰向けになったまま手足を必死にばたつかせている。

「助けてください。このままでは死んでしまいます」

僕とセルバンテスは力を合わせ、亀を元の向きへ戻してあげた。

「ありがとうございます!」

亀は何度も頭を下げた。

そして少し遠慮がちに言った。

「どこかへ向かうのですか。もしよかったら、僕も仲間に入れてください」

僕たちは顔を見合わせた。

亀の足では、次の駅までたどり着けるか分からない。

するとセルバンテスが言った。

「僕の背中に乗ればいいよ。こう見えても、昔は重い荷物をたくさん運んでいたんだ」

こうして亀も旅の仲間になった。

歩きながら僕は尋ねた。

「君の名前は?」

「タオです」

亀は静かに語り始めた。

タオは駅の近くにあった動物園で飼われていたという。

水の中だけでなく、乾いた砂漠でも生きられる珍しい亀だった。

だが数日前、その動物園に爆弾が落とされた。

多くの動物たちと飼育員たちは命を落とした。

タオだけが爆風で遠くへ吹き飛ばされ、あの場所でひっくり返っていたのだという。

「僕は、あのまま死ぬのだと思っていました」

その話を聞くと、ジョバンニおじいさんは拳を握り締めた。

「許せない。そんなことをしたやつを、絶対に許さない」

誰も言葉を返さなかった。

ただ線路の先を見つめながら歩き続けた。

 

やがて夜明け前、僕たちは次の駅の近くにあるコンビニの廃墟へたどり着いた。

建物は壊れていたが、中にはまだミネラルウォーターや缶詰、保存食が残されていた。

僕たちは久しぶりに十分な食料を確保し、ジョバンニおじいさんとジョンおじいさんもそこで休息を取ることができた。

仲間はまた一人増えた。

線路はどこまでも続いている。

その先に平和な町があるのか、それともさらなる悲劇が待っているのか、まだ分からない。

それでも僕たちは歩き続ける。

いつか安心して暮らせる場所を見つけるために。

そして、この世界に爆弾を落とした者たちと向き合うために。