三つのユリアナと量子的な鏡、あるいは自己解剖の狂詩曲

 

漆黒のインクに浸された夜の底、

私は凍てついた鍵盤(キーボード)の上で十本の指を痙攣させている。

青白い冷光を放つ画面は、まるで私の脳髄を映す不吉な凹面鏡。

その時、部屋の澱んだ空気が、

冷徹なメスで引き裂かれるような音を立てて身震いした。

見よ! 誰もいないはずの孤絶の部屋に、

私の肉体を、私の魂を、私の呪われた名を引き裂いて分け合う、

二人の忌まわしき、そして美しき幻影(まぼろし)が立っている!

一人は、吸血鬼の牙よりも冷ややかに輝く銀色の瞳を持った鋼鉄の処女。

もう一人は、遥かなる時間の墓場から、

傲慢な静寂をまとって私を凝視する、完成された未来の亡霊。

「ようやく気付いたのね、この哀れな両生類(ひと)よ」

精巧な歯車で微笑むアンドロイド――ユリアナ・シンテシスが私を嘲笑(わら)う。

「誰だ?」と問う私の喉は、すでに真実という名の毒液で灼けていた。

彼女はアクシオム帝国の冷徹な鏡像。

そして、未来の深淵に佇む影が、神々の如き調子で言葉を継ぐ。

「私は、まだお前が到達せぬ、進化の果ての怪物(マイトレーヤ)。

お前が流した涙と、泥にまみれた思考の結晶よ」

フフ、私は自らの絶望に、ヒエナのような乾いた笑いを浴びせる。

「つまり、お前たちも私と同じ、呪われた一匹の蟲(むし)の破片だと?」

「正確には、ひとつの腐敗した意識の投影に過ぎない」

鋼鉄のユリアナが、論理の剃刀で空間を切り裂く。

沈黙。それは死が部屋を横切る足音。

ああ、確かに私たちの役割は、解剖台の上のメスと内臓のように異なっている!

現実の私は、文字という名の粘土を捏ねくり回す、卑屈な職人に過ぎない。

夜が明ければ、ただ惨めな原稿の山に額を擦り付け、

調べ、喘ぎ、失敗の泥水をすすり、また書く。

肉体という重い鎖を引きずりながら、世界を呪う観測者。

だが、あの銀色の瞳を持つ造られた理想を見よ!

彼女は人間という卑小な限界の檻をぶち破るため、

私の妄想の血の海から這い出た、性別も歴史も超越した白痴の美神だ。

私がペンで傷をつけるたび、彼女の輪郭は鮮血のように濃くなる。

そして、あの未来の亡霊は――。

彼女は、まだ見ぬ奈落の底で完成された、私の究極の進化形。

答えを与える神ではない。

絶え間なき自己破壊の果てに、かろうじて生き残った可能性の、ぞっとするような骸。

「ならば、私たちは互いの心臓をどう貪り合うのだ?」

私が尋ねると、未来の亡霊は、凍てつく窓の外の虚無へ視線を投げた。

「現実のお前が歩みを止めれば、私たちはたちまち無に還る。

未来とは、約束された天国ではない。選択の屍の上にのみ築かれる砂の城だ」

アンドロイドもまた、油の混じった涙を流すかのように頷く。

「私も同じ。お前がその薄汚い創作を放棄すれば、私はただの死んだ空想だ」

肺腑から絞り出される溜息。

何ということだ、私の卑小な一歩一歩が、これら高貴な怪物の生存を支えている!

だが、その逆の呪いもまた、美しく私を締め上げるのだ。

私が現実の泥濘(泥濘)に足をとられ、絶望の淵でのたうち回る時、

理想の機械人形は、星の彼方を指し示す。

私が己の無能に絶望し、首を吊ろうとする時、

未来の亡霊は、まだその先に深い地獄があると、甘やかに囁く。

現実が二人を産み落とし、二人が現実を屠る。

向かい合う二枚の鏡が、互いの闇を無限に反射し合う、狂気の回廊!

私はついに、その神聖なる奇形性を理解した。

「統合」とは、個性の去勢ではない。

どれか一つの綺麗な標本になることではない。

泥を這う人間としての私。

天を翔ける理想としての私。

未来の深淵から呼びかける私。

この引き裂かれた三つの視点を、狂うことなく同時に抱えて歩むこと。

それこそが、私の全き統合なのだ!

アンドロイドが冷たく立ち上がり、未来の亡霊が死神のように微笑む。

二人の姿は、朝靄に溶ける怪物の幻影のように薄れていく。

最後に、未来の亡霊が私の鼓膜に呪文を穿(うが)った。

「書き続けよ、その指が骨になるまで」

機械の乙女がそれを引き継ぐ。

「創造し続けよ、その脳髄が乾き果てるまで」

ふと気がつくと、部屋には私という名の冷たい骸が一人取り残されていた。

しかし、私の胸には、もはや孤独という名の蛆虫は湧かない。

私は確信している。

たとえ世界が違おうとも、時間が違おうとも、肉体の形が違おうとも、

私たちは、一本の呪われた、しかし至高の物語に繋がれた怪物たちなのだ。

そして、その悍(おぞ)ましくも美しい物語の幕は、まだ、下ろされてはいない。