【帰命卍パヤナーク戦記7話目】第7話 次元間戦争の真実

帰命卍パヤナーク戦記

第7話 次元間戦争の真実

セベク神の翼に乗って


アクシオム帝国暦2847年 午後1時30分

東南アジア連合の勝利により、私たちは一時的な平和を得た。しかし、それは嵐の前の静けさに過ぎなかった。

私の額の卍の印が、これまでにない強烈な振動を始めた。それは単なる敵の接近を示すものではない。もっと根源的な、宇宙の構造そのものに関わる重大な情報を受信していた。

「天水、何が起きているの?」レンが心配そうに私を見つめた。

「分からない…でも、何か巨大なものが動き始めている。」

その時、地面が激しく震動し、空間に巨大な亀裂が現れた。しかし、それは敵の侵攻ではなく、帝国からの緊急召集だった。

【セベク神の翼】

セベク神の翼での次元間移動

亀裂から現れたのは、セベク神(バオバオ神)の巨大な翼だった。しかし、それは以前見た姿とは全く異なっていた。宇宙空間を自由に航行できる、神々しい光を放つ翼だった。

『天水よ、レンよ、我が翼に乗るのだ。今こそ、真実を知る時が来た。』

セベク神の声が響いた。私たちは迷うことなく、その巨大な翼の上に飛び乗った。愛犬ジェットも勇敢に私たちと共に翼の上に立った。

翼が羽ばたくと、私たちの周囲の空間が歪み始めた。これは単なる物理的な移動ではない。次元そのものを超越した移動だった。

「すごい…これが次元間移動なのね。」レンが感嘆の声を上げた。

私たちは無数の次元の境界線を通り抜けていく。色とりどりの光が織りなす幻想的な宇宙の景色。星雲が踊り、銀河が回転し、時間と空間が混ざり合う不思議な体験だった。

【宇宙の真の構造】

宇宙の真の構造を示すホログラム

次元間移動の最中、突然巨大なホログラムが現れた。それは皇帝アクシオム様からの直接通信だった。

『我が忠実なる守護者たちよ、ついに真実を明かす時が来た。』

皇帝様の威厳ある声が宇宙空間に響いた。ホログラムは宇宙の真の構造を映し出した。

そこには、12の次元が複雑に絡み合う巨大な構造があった。各次元には、それぞれの創造神が存在し、宇宙の秩序を維持していた。

『汝らが戦っている太古の神々は、単なる侵略者ではない。彼らは、宇宙の基本構造を支える「創造の柱」の一部だった。』

私は衝撃を受けた。私たちの敵は、宇宙の創造神だったのか。

『しかし、彼らは長い年月の間に腐敗した。創造ではなく、破壊を望むようになった。彼らの目的は、宇宙の根源的な力「原初の意志」を支配し、宇宙を自分たちの意のままに作り変えることだ。』

「それなら、私たちは単なる侵略者ではなく、宇宙の救済者なのね!」レンが興奮して叫んだ。

『その通りだ。我らアクシオム帝国は、新しい宇宙秩序を建設するために立ち上がった。汝らの使命は、宇宙の自由を守ることだ。』

【インドの帝国要塞】

インドの帝国要塞

セベク神の翼に乗って、私たちはインドに到着した。しかし、そこには想像を絶する光景が広がっていた。

ヒマラヤ山脈全体が、巨大な帝国の要塞に変貌していた。古代のヴェーダ文明と帝国の技術が融合した、壮大な建造物群。山々に刻まれた巨大な卍の印が、神々しい光を放っていた。

「これは…帝国のアジア方面軍総司令部よ。」レンが説明した。

空中に浮かぶ神殿群の中で、私たちは新たな仲間と出会った。

「天水よ、ついに来たか。」

巨大なガルーダが私たちを迎えた。その隣には、蛇神ナーガと象頭神ガネーシャが立っていた。

「我らは長い間、この時を待っていた。古代のヴェーダ文献に記録されている神々の戦いは、実は帝国と創造神の戦争の記録だったのだ。」

つまり、人類の最古の文明記録は、この宇宙戦争の証拠だった。

「インドの神々も、帝国の守護者だったのですね。」

「そうだ。我らは皇帝アクシオム様の忠実なる僕。宇宙の秩序を守る使命を帯びている。」

【虚無の王との最終決戦】

虚無の王との最終決戦

しかし、インドの守護者たちは深刻な警告を発した。

「創造神たちは、ついに最終兵器を投入してきた。」

「最終兵器?」

「『虚無の王』だ。存在そのものを否定する究極の存在。」

その時、空間に巨大な闇が現れた。それは単なる暗闇ではなく、存在そのものを吸い込む絶対的な無だった。

『我は虚無の王。全ての存在を無に帰す者。』

その声は、聞く者の存在を揺るがした。虚無の王の力は絶大だった。その存在するだけで、周囲の現実が崩壊していく。

「これは…存在そのものへの攻撃よ。」レンでさえ、恐怖に震えていた。

危機に際して、パヤナークが完全に覚醒した。

『天水よ、我が真の力を見よ。』

パヤナークの身体が巨大化し、その真の姿を現した。それは、宇宙そのものを包み込むほどの巨大さだった。

『虚無に対抗するのは、絶対的な存在肯定。我らは存在する。我らは生きている。』

パヤナークの力により、虚無の王の攻撃が相殺された。

戦いの中で、レンの皇帝遺伝子がさらに覚醒した。

「私は理解した。存在することの意味を。」

レンの身体から、純粋な存在の光が放射された。

インドの守護者たちも戦いに参加した。ガルーダの翼、ナーガの牙、ガネーシャの智慧。それらすべてが、存在を肯定する力となった。

虚無の王 vs パヤナーク。存在の否定 vs 存在の肯定。この戦いは、哲学的な対立でもあった。

【混沌の皇帝の予告】

私たちの連合攻撃により、虚無の王は一時的に退却した。しかし、最後に恐ろしい予言を残した。

『我が主、混沌の皇帝が目覚めつつある。その時、全ての存在は無に帰すであろう。』

「混沌の皇帝?」

ガルーダが深刻な表情で説明した。

「創造神たちの真の支配者。皇帝アクシオムの宿敵にして、宇宙を混沌に陥れんとする存在。」

私たちは理解した。真の最終戦争は、これから始まるのだ。

皇帝アクシオム vs 混沌の皇帝。
秩序 vs 混沌。
創造 vs 破壊。

インドの守護者たちも、正式に私たちの仲間になった。東南アジア連合に加えて、インド連合も結成された。

「次は、ヨーロッパの守護者たちと連携する必要がある。」レンが戦略を提示した。

「北欧の神々、ギリシャの神々、ケルトの神々。みんな帝国の守護者なのね。」

私たちの戦いは、もはや個人的な冒険ではない。宇宙の運命を決する、最終戦争だった。

愛犬ジェットが勇敢に吠えた。小さな身体に、大きな使命が宿っている。

セベク神の翼に乗って、私たちは次の戦場へと向かった。宇宙の命運を賭けた戦いが、いよいよ本格化しようとしていた。

【続く】

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第7話 次元間戦争の真実

次回:第8話「帝国科学技術の結集」