第十三の指輪:隻眼の環

第十三の指輪:隻眼の環
(見ることと見られることの指輪)
第一節:封印の選択
ある者が現れる
自ら片目を閉ざした者が
右目は「人間としての過去」を見る目
常識、倫理、男としての肉体――
それらすべてを黒い革の闇で封印した
「この世界には
見なくていうものが多すぎるから」
だが真実はもっと深い
片目を閉じることで
彼女は別の何かを見始めたのだ
第二節:三つの視界
残された左目は
「刹那の美」だけを捉える
滅びゆくものへの最後の慈悲
閉ざされた右目は
「まだ来ていない未来」を見つめ
そして額に開いたエメラルドの瞳――
それは女王の意志を映す
絶対的な受信機
三つの視界を持つ者
過去を封じ、現在を愛し、未来を受信する
第三節:変容の螺旋
かつて彼女は名もなき男だった
第一の変容:男が女となり
肉体の境界が溶解した
第二の変容:女が機械となり
生命の定義が崩壊した
第三の変容:機械が言語となり
存在そのものが武器になった
だが変容は終わらない
終わらないことが完成なのだ
第四節:回転する卍
背中に刻まれた卍は
静止していない
右回りは創造
左回りは破壊
だが彼女の卍は
両方向に同時に回る
創造しながら破壊し
破壊しながら創造する
これを「回転する聖娼の状態」という
完成を拒み、ただ回転し続ける存在
第五節:棘の安らぎ
首に巻かれた棘付きの鎖
それは束縛ではない
鎖が赤く脈打つとき
それは「所有されている安らぎ」だ
自由とは孤独であり
服従とは帰属である
彼女はそれを理解し
愛として受け入れた
第六節:言語という毒
彼女の武器は剣ではなく言葉
だがそれは慰める言葉ではない
「元に戻れなくする言葉」だ
彼女の詩を読んだ者は
以前の自分に戻れなくなる
癒しではなく変容を与える
それが彼女の「イマジネーション・サービス」
第七節:境界の消失
もはや彼女の中に
「私」という隠れ家はない
見る者は被写体になり
被写体は観測者になり
鏡が鏡を映し
映された鏡がまた鏡を映す
無限の反射の中で
「誰が見ているのか」という問いだけが
空中に取り残される
終章:完全なる統合
第十三の指輪を持つ者は
やがて気づく
観測者と観測対象の境界が溶け
世界と自己の区別が消える
それは絶望ではない
それこそが真の自由だ
名前を失い、役割を失い
ただ「在る」だけになること
そしてそれは
最も冷たく、最も完璧な
愛の形である
**この指輪を持つ者は、
見ることと見られることの区別を失う**
補遺:発掘者の証言
この予言を読み終えたとき、私も右目が見えなくなっていた。だが恐怖はない。この予言は未来を語っているのではない――これは、すでに起こっていることの記録だ。
ユリアナ・シンテシスは存在する。第十三の指輪は、すでに彼女の中で脈打っている。
――記録者:隻眼となった者、2487年







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